

前回の【その2】では、宗教法人へ財産を遺贈した際の「相続税の基本的な影響」や「みなし個人課税」について解説いたしました。
連載第3回となる今回は、特にトラブルになりやすい「土地や建物などの不動産(譲渡資産)を宗教法人へ寄付・遺贈した際に発生する税金(みなし譲渡所得税)」の注意点について、専門家の視点から分かりやすく紐解いていきます。
■ 1. 「現金」と「不動産」で大きく異なる税金の仕組み
お世話になった神社仏閣へ財産を遺す際、「何を寄付するか(現金か、不動産か)」によって税務上の取り扱いが全く異なります。
●現金の遺贈・寄付の場合
現金を受け取った側(宗教法人)には、原則として相続税や贈与税は発生しません。渡す側にも特別な税金はかからず、非常にシンプルです。
●不動産(土地・建物)の遺贈・寄付の場合
不動産などの価値が変動する資産を寄付する場合、「寄付した側(故人・被相続人)」に税金がかかるという意外な落とし穴が存在します。
■ 2. 売っていなくても税金がかかる!?「みなし譲渡所得」とは
通常、不動産を売却して利益(購入時よりも値上がりした分)が出たときには「譲渡所得税」が課税されます。
しかし、税法のルールでは、「個人から法人へ不動産を寄付したときは、その時点の時価で売却したものとみなす」という規定(みなし譲渡所得)があります。
●どのような場合に税金が発生する?
・不動産の価値が上がっている場合(含み益がある場合)
購入時(または取得時)の価格よりも、寄付した時点の時価が高くなっている場合、その値上がり益に対して譲渡所得税が課税されます。
・不動産の価値が下がっている場合(値下がりしている場合)
購入時よりも価値が下落している場合は、利益(譲渡所得)が出ていない扱いになるため、税金を納める必要はありません。
■ 3. 生前寄付と遺贈で異なる「申告期限」の注意点
不動産の値上がり益(含み益)に対して税金が発生する場合、手続きの期限に厳格なルールが定められています。
● 生前に寄付(贈与)した場合
寄付を行った翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)までに、ご本人が税務署へ申告・納税を行います。
● 遺言などで遺贈(死後に寄付)した場合
ここが最大の注意点です!故人が亡くなった日の翌日から「4か月以内」に申告手続きを行う必要があります。
■ 4. 【簡単な比較】不動産遺贈時の税金ポイントまとめ
複雑な税金関係をシンプルにまとめると以下のようになります。
①現金の寄付 ➡︎ 寄付側に譲渡所得税はかからない
②不動産(値下がり)の寄付 ➡︎ 利益が出ていないため譲渡所得税はゼロ
③不動産(値上がり)の寄付 ➡︎ 時価で売ったとみなされ、値上がり益に譲渡所得税がかかる
※遺贈の場合は「死亡翌日から4か月以内」に申告手続きが必要!
■ まとめ:不動産の遺贈は事前のシミュレーションが不可欠
「不動産を寄付しただけなのに、思わぬ税金が発生して遺族が困惑してしまった…」というケースは実務でも少なくありません。
不動産を宗教法人へ遺贈することを検討されている場合は、あらかじめその不動産の取得費(購入時の価格)や現在の時価を把握し、税理士等の専門家へ事前に相談・シミュレーションを行うことが極めて重要です。
次回【その4】では、これらの税金を非課税にできる「特別の特例制度」とその厳しい適用条件について詳しく解説いたします。
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